2005年3月8日
不安と悩み、マイナス感情のエネルギー
昨夜、NHKのクローズアップ現代を見ていたら、「ブンガクに異変アリ!?」というタイトルで10台から20台前半の若手作家の台頭を特集していた。阪神淡路大震災・サリン事件・9.11テロなどの不安や、若者が将来像を描き難い時代であるが故の悩みなどが、彼らが登場してきた背景ではないかというのである。
ずいぶん昔ある悪友が「悩みとは進度の過程である」なんて言っていやがったっけ。「喜びなどの感情より一段レベルの高い感情である」という彼の考えに反感を覚えながらも共感した。「不安や悩みは、ある事を改めたり、新しく産み出したりする力である」と彼はまとめた。
やはりずいぶんと昔、あるひとにすすめられて「8・1/2」を観た。フェリーニの分身と思われる映画監督の主人公グイドはスランプで新作の進行がうまくいかない。妻ルイザを撮影の現場に呼び寄せても、乞食女サラギーナのことを思い出しても、幻想の少女クラウディアに出会っても映画の構想はまとまらず結局クランク・インできない。フェリーニは「私の映画は、私の内なる『不安』と『悩み』から産み出されている」と言っているのだと思う。
不安と悩みはどうやらプラス思考のようである。
私が今でも時々読み返すマンガに「星の時計のLiddell 」(内田善美)がある。
ロシア人の血を引く主人公ウラジーミルと環境保護運動をしている日本人留学生 葉月との会話の中で「45億の不安」という言葉が出てくる。(このマンガが描かれた当時の世界人口は45億人であった)「こんな巨大なエネルギーが何かを生み出さないはずはないわ」と葉月は言う。急激な人口増加と環境変化は食料問題より先に人の精神をダメにするだろう「かくれた次元」(無聊ブックス参照)によれば、生物の個体間距離が接近しすぎると、食料が十分にあってもストレスが生じて大量死を起こす。次世代の環境では、過密による生命維持に支障をきたさない遺伝子レベルでの「新しい精神」の誕生が必然であると葉月は考えている。
ここまで来ると、不安と悩みのエネルギーは怖いなぁ。