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2009年2月17日

「建物のカケラ ~一木努コレクション~」を観て

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東京都立小金井公園内にある江戸東京たてもの園にて、3月1日(日)まで。

一木努コレクションのことは、藤森さんか赤瀬川さんの本で知っていたが、実際に拝見するのは初めて。なんと23年ぶりの展示とのこと。久々にかなり行きたいと思っていた展覧会だったのだが、実際の展示は僕の過大な期待を裏切らない大変密度の高い、小さい会場にもかかわらず様々な粋が凝らされ、楽しめる内容だった。

一木コレクションとは、主に大正~昭和20年代に建てられた建物が、高度成長期からバブル経済期を経て現在までに取り壊された近代名建築の残骸の一部(石、レンガ、タイル、モルタルの破片、金物、手すり、建具など)を独自の審美眼で採取・保存したものである。収集物はあくまでも「カケラ」であって再利用可能なものは極めて少ない。収集範囲は全国に900ヵ所及び、今回の展示ではそのうちの700点が展示されている。驚くべきはこれらのコレクションは一木さんの本業(歯科医)の傍ら、建物の解体現場に通い収集されたものであることである。

僕が訪れた2月15日(日)には、会場に一木さんご本人がいらっしゃったので、少しお話することもできた。以下、その内容の記録。

hyodo:今回の展示はどのような経緯で実現したのですか?

一木さん:たてもの園の学芸員の方(浅川範之氏)が家までコレクションを見にきて、是非展覧会をやりたいということで実現しました。

hyodo:コレクションはどのように保存されているのですか?

一木さん:大体は段ボールにカケラとそのメモと一緒に入れて、借りている納屋に積み上げています。

hyodo:このカタログは無料で頂いていいのですか?すごい密度の内容ですね。売れますよね(薄いが内容は濃い。これを貰いに行かない手は無い)。

一木さん:いいでしょ。学芸員の方が作ってくれたのですが、僕もこれなら売れると思うんですけどね。

ちなみに「建築の忘れがたみ―一木努コレクション」( INAXブックレット1985年刊、絶版)は現在高額で取引されている。

ここで、お知り合いが会場にいらっしゃり会話は途切れてしまい残念。展示順路を辿って行くと会場の出口の壁には「時」の字があった。その木製切り文字は、一木さんの地元下館にあった時計店の看板文字なのだが、この日拝見したどちらかというとユーモラスにさえ見える「カケラ」たちの本心を最後に突きつけられたような気がしてドキリとした。

帰り道、いろいろと「建物のカケラ」展のことを考えた。思いついた順に述べる。

  1. 第一勧銀本郷支店の天井飾りと、徳島県庁の換気口が欲しいな。日仏会館や吉阪隆正邸のタイルも良かった。
  2. 一木さんは近代建築の遺族なのだな。ただ集めるだけで(不動産・建設業界に)批評性を帯びてしまう行為ゆえ、23年間も展示が途絶えてしまったのかも。
  3. MビルやM地所、M不動産など(Mが着くところが多いな)のトップにはわからない・解れないだろうな。自己矛盾・自己批判となったとしても展覧会の援助すれば、彼らにメリットこそあれデメリットはないだろう。なぜなら彼らの援助があれば一木コレクションの批評性が弱まるからである。
  4. もっと大会場でやっても良い内容と点数の展覧会だったから南条さんがM美術館でやったりしたら面白いのに。RCAビルの壁画にレーニンを描いたリベラのように追い出されたりして。でもロックフェラーはギャラは支払ったけど・・・・。

今日の写真
江戸東京たてもの園には27棟の移築・復元建築物がある。この写真は「常盤台写真場」(昭和12年建築)の写場。北側の大きな高い窓からの光が気持ち良い空間をつくっています。

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カテゴリー:アート, 建築 |  コメント (0) |  投稿者:hyodo

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