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2004年11月18日

オレの勝負服!!

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私はひとり寂しく建築設計の仕事を自宅でしている。その場合の仕事着(と言っていいのかどうかはわからないが)は、襟付きのシャツにアウトドア系のパンツである。シャツは極めて普通であるので、ここではあまり取り上げないことにする。問題はパンツである。なぜアウトドア系かというと、大抵、腰紐やベルトが一体となっておりベルトを通す必要がなく、椅子の上で片足だけ正座したりあぐらかいたりするのに、動きやすいからである。ただし見栄えはあまり良くない。そのパンツの中にグレーのクライミングパンツがある。素材が合成繊維なので、軽く洗濯してもすぐに乾く。私は結構気に入っている。

独立する前に勤めていた設計事務所に行くときもそのクライミングパンツを穿いて通勤することがあった。その日、私はグレーのMUJIのシャツとそのパンツで、上下ともにグレーという出立ちだった。私より若い女性スタッフ2人にその服装について指摘を受けた。

「hyodoさん、その服装相当ヤバイです」
「え?そう?どうせ一日中事務所だからいいじゃん」
「でも、出会いがあったらどうするんですか?」
「絶対にない」
「出会いはなかったとしても、知り合いの女性に会うかもしれませんよ」
「それもない。今日もひとりも会わなかった」
「どうやら私たちは女性じゃないみたいね・・・」
私は形勢の不利を感じ、その場を取り繕おうとした。
「これがオレの勝負服なの!」

ことばを発したとたん、更に落ちていくのを感じたが、もう手遅れだった。「勝負服!」「勝負服!!」それ以降そのパンツを穿くたびに馬鹿にされるようになった。

独立後すぐにヘアサロンの店舗設計をする機会があった。工事が無事終わり、開業前の準備を手伝いに行った。私は軽トラックでプラチナ通りのその店に乗りつけ、荷物の上げ下ろしをした。店内にはWさん夫婦のほかに女性スタッフが2人いた。みんな小奇麗な実にヘアスタイリストらしい服装で、シャンプーやカラー材などの色鮮やかなパッケージを運んだり、並べたりで忙しそうだった。荷物の搬入が終わり、W氏は私をスタッフに紹介した。

「えーと、この人がこの店のデザインをしてくれたhyodoさん」
「えっ?(運送業者か引越し業者かと思ってた)」
と聞こえた。彼女たちはそれまで、私に荷物を置く場所を指示していたので、少しバツが悪そうだった。ようやく同じ立場の人間として扱ってもらえた。その日も私はグレーのMUJIのシャツと例のパンツという格好だった。

サリンジャーの「ゾーイー」という小説の中で、ゾーイーの母親ベシーが着ているキモノの家庭着の描写がある。キモノなのに特大ポケットが付いていて、更にその中には煙草、金槌、ナイフ、蝶番などがはいっており、とにかく見苦しい。それを何とか捨てさせようと、娘たちが画策したりもしたが、未だにそれは実行に至っていない、という場面のことである。

先日、この小説を読んで、大いに共感するところがあった。私はベシーとそのキモノを応援し、未来永劫を祈った。しかし、もう少し服装に気をつけたほうがいいかもしれないと初めて思った。

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カテゴリー:雑記 |  コメント (4) |  投稿者:hyodo

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