2014年3月6日
事務所の PC を新調した(自作のススメ)
今年 1月に、兵藤善紀建築設計事務所にスタッフが入ったこともあり、スタッフの T君と嫁さんが使用する共用 PC を新調した。もちろん自作した。自作する理由を下記にまとめる。
- 故障したときのリスク分散と修理のしやすさ
- スペック及び費用の調整のしやすさ
- メーカー製 PC に付属するごみソフトが無いので、PC の安定性が良い
事務所設立時は、PC ハードウェアについての私の知識は皆無といってよく、設立から5年くらいは、Dell を使用してた。故障時のカスタマーの対応も良く、修理もスムーズだったが、ハードディスクやマザーボードなどの PC パーツの値段を知ってしまうと高いように感じるようになった。よくよく考えてみれば、ハードディスクのが調子悪いのなら、CrystalDiskInfo などで故障の可能性を調査できるし、原因がはっきりしていなくても、とりあえずハードディスクを Amazon で買えば翌日届くし、換装して OS やアプリケーションを再インストールしてみればよいだけのハナシなのである。ハードディスクが原因でなければ、メモリやマザーボード、電源などを交換していけばよい。最新のハイスペック CPU の交換でもなければ、たいした金額ではなく、Dell の修理費や、掛かる日数を考えればなおさら低コストで済む。
また、Dell などのメーカー製 PC は、新型 CPU などに対応させるためのファームウェアが提供されない。よって内部パーツのアップグレードによる延命も図れず、経済性が悪い。グレードアップのためには、本体丸ごと処分する破目になり、環境負荷も大きい。
自作するようになったきっかけは、私の高校の後輩がプロジェクションマッピング & CG アニメーションを製作するファッション業界では有名なデザイン事務所をやっていて、5年ほど前たまたま彼の事務所に行く機会があり、そこにあった大量の自作 PC の山を見たことである。Autodesk Maya を快適に操作するために ハイエンドクラスの Quadro が取付けられた作業用 PC や、フォトリアルアニメーションを納期に間に合わせるためのレンダリング専用 PC 群であったのだが、彼に話を聞くと、〆切のたびにモデリングが終わるとレンダリング専用マシンを自分で部品を買いに行き、順次最新最速のスペックに組み直して、できるだけ速くレンダリングが終了するようにしているとのことだった。
彼の洗練された美しい仕事の内容と事務所に山積みの自作 PC には大変感銘を受けた。彼は非常にクリエイティブであるので、独自の技術が必要となり、表現を実現するためにソフト&ハードウェアに精通し駆使する必要があったのである。
私の仕事は建築設計であるので、彼のようなハイレベルに到達しなくてもよいが、自作 PC を組むにはそれなりの知識は必要である。組み方は、「パソコン 自作 本」と Amazon で検索すれば、いろいろな書籍が出ていて、初心者向きのものを一読しておくことをオススメする。
仕事で使用する主なソフトウェアを下記にまとめる。
- 2D-Cad > Vectorworks
- 3D-Cad > SketchUp(レンダリング:SU Podium)
- 画像編集 > Photoshop
- 書類作成 > MS Office Pro、Acrobat Pro、EmEditor
- ネット関連 > Chrome、Dropbox、Evernote
- ツール > Total Commander、AutoHotkey、SparkleShare
私も彼のようにプロフェッショナルな視点でPCを組んだ。以下考察。
- SU Podium でのレンダリングはマルチコア対応なので、ハイスペックを求める。しかし急ぐ場合は、私が使用しているマシン(i7-2600)で行えばよいことである。(1ショット 3分程度で終わる)
- Vectorworks も SketchUp も、Core2Duo E8400 程度のスペックで全く問題がない。現行 Haswell なら Celeron でも行けるだろう。
- SketchUp は CPU も GPU もハイスペックにする必要はないが、安定性、表示の正確さを求めるなら、経験的に OpenGL 専用グラフィックボードが必要。Quadro はエッジのアンチエイリアスが美しく見みやすい。
- PC の操作に人間が待たされるのは良くない。OSやアプリの起動、ファイルの読み書きのスピードは重要。よって SSD とする。バックアップは Dropbox 及び SparkleShare で同期されるフォルダを定期的に Samba サーバ側で行うことにより、SSD の信頼性の低さを担保する。
- メモリもそれほど必要ないし、拡張性も求めないので、チップセットは H81 で良いだろう。
- スタッフ(平日使用)& 嫁(週末使用)の共用なので、日中は常に電源が入る。よって、電源は高効率で静音性が高いものにしたい。
- 他の3台(2台の自作 PC と 1台の BTO PC)とパーツ交換が可能なようにする。具体的には、PC ケースの大きさをミニタワー以上とし、マザーボードのフォームファクタは Micro-ATX に統一する。
その結果、下記のようなマシン構成となった。
- CPU:
- Intel/Pentium Dual-Core G3220 > 5,297円
- MB:
- ASUS/H81M-E > 5,478円
- ケース:
- Loop/LP-2203 > 3,680円
- 電源:
- センチュリー/SF-500P14FG > 12,160円
- メモリ:
- I-O DATA/DY1600-4GX2/EC (4GB 2枚組) > 7,490円
- 内臓SSD:
- Intel/335 Series SSDSC2CT240A4K5 > 18,980円
- グラボ:
- NVIDIA/Quadro K600 > 15,980円
- DVDドライブ:
- バルク品 > 1,980円
- ディスプレイ:
- DELL/U2412M > 22,480円
- OS:
- Windows 8.1 Pro (DSP版) 64bit > 16,081円
- 費用合計:
- 109,606円
上記に少しコメントを付ける
- CPU は、CPU Benchmarks によると Haswell Core i7 の1/3、Core i3 の2/3 程度のスペック
- ケースは、これまで SilverStone を選ぶことが多かったのだが、ミニタワーで幅 200mm 以下にしたかった。いろいろ探したのだが、地元川口の商社が扱っている極端に安いケースになった。作りは悪くなく気に入っている。
- 電源は、高価だが、80PLUS PLATINUM認証の上ファンレス。非常に静か。
- SSD とメモリは、1年前よりだいぶ価格が上昇している。
- グラボは、Quadro K600 をドスパラで安く入手できた。
- ディスプレイは、1920×1200 の Dell 直販の製品。
以上、1月に組み、現在稼働中。Vectorworks や SketchUp の使用で CPU のスペック不足を感じることは無い。私のメイン PC (SandyBridge Core i7-2600、Quadro 600)と比較して、SketchUp の影の表示に掛かる時間も変わらない。
しかし SU Podium のレンダリング時間は、4コア 8スレッドの Core i7 とはさすがに差があるだろうと思い、計測してみた。下記は、レンダリング画像で、元の大きさは、1600 × 900 px である。
括弧内の数値は、CPU Benchmarks での CPU 性能を表す数値で、大きいほど性能が高い。
- Pentium Dual-Core G3220:
- 15分51秒(Passmark CPU Mark 3228 )
- Core i7-2600:
- 6分30秒(Passmark CPU Mark 8315 )
よって、2.4倍の差があった。CPU のスペックの差とほぼ一致する。価格は、現行の Core i7-4770 (約 32,000円)と比較すると、5倍もある。
この差は大きいが、私の事務所ではレンダリングは、年に5~6回程度しか行わないので、業務に支障をきたすほどでは無い。
以上、スペックとコストのバランスの良い PC を組むことができた。
私の仕事である建築設計は、クライアントが固有の敷地に独自のオーダーを求めるため、ほぼ全て特注である。よってプロジェクト毎に一から考えて作る必要がある。PC も、ユーザの使い方により、購入毎に多くのパーツから組合せを選んだ方が良いのは同じだ。