2011年3月20日
原発に頼ることをやめ、再生可能エネルギーへ移行する方がリアルな気がしてきた
福島第一原発の事故が深刻な事態になってくるにしたがって、僕自身、考え方が変化してきたので、今、整理しておこうと思います。事故以前は、どちらかというと原発賛成派でした。今後は原発に代わるエネルギー源を考えていく必要があると思います。
それでは、原発の代替エネルギーとして何が考えられるのでしょうか?そこでまず思いついたソーラー発電について、どの程度期待できるのか?現実的なエネルギー源となりうるのか?を調べてみました。
太陽光エネルギー資源の量
以前、「世界中の砂漠にソーラーパネルを敷き詰めれば、数時間で全世界の必要エネルギーを得ることができる」ということを聞いたことがあった。改めて検索して調べてみても、この根拠を見つけることは出来なかったが、NEDO (新エネルギー・産業技術総合開発機構) の技術白書ページの PDF 「太陽光発電の技術の現状とロードマップ(8.66MB)」によると
地表面に到達する太陽光エネルギーは90,000TW、そのうち回収可能なエネルギーは1,000TW と試算されている。このうちの1%(10TW)のみを利用すると仮定しても、2007 年時点の世界の発電容量(4.5TW)11の約2.2 倍に相当する大きさである。
2.1.2 ポテンシャル(1)世界 p9
との記述があり、太陽光エネルギー資源は莫大な量があることがわかる。
住宅にソーラーパネルを設置した場合のコスト及び発電量
- 設備費:
-
約200万円
(ソーラーパネル4kW、パワーコンディショナー等制御設備機器、取付費込の費用。シャープの製品での概算) - 年間発電量:
- 4463kWh (埼玉県熊谷市の予測。シャープのウェブより試算。参考:1世帯の平均年間電気消費量: 5500kWh。よって、81% を自給できる。)
- 耐用年数:
- ソーラーパネル > 20年以上、制御装置 > 約10年
- 維持費:
- 受光障害(鳥のフンなど)が生じた場合、要清掃。制御装置を約10年で更新。ここでは仮に 5万円/年 のメンテナンス費が発生すると仮定してみる。
- 発電コスト:
-
(200万円+5万円*20年)/(4463kWh * 20年)
= 33.61 [円/kWh] (20年の平均値)
原子力発電所の設備費と発電コスト
北海道電力が、設備費や財務情報をウェブ上で見やすく発表していたので、これを参考に試算してみた。
- 設備費:
- 約2,926億円 (参考:北海道電力株式会社泊発電所原子炉設置変更許可申請(3号原子炉の増設)の概要)
- 年間発電量:
- 6,287,413 MWh (参考:ほくでん:発電実績)
- 維持費:
-
(H21年の売上高-営業利益)*(3号原子炉の発電量/全発電量)
=(5500億円-500億円)*(6,287,413MWh/31,500,000MWh)
=998億円
(参考:ほくでん:経営指標等(連結)) - 耐用年数:
- 30年はあるだろうが、ここではソーラーパネルに合わせて 20年とする。
- 発電コスト:
- (2926億円+998億円*20年)/(6287MWh * 20年)
= 18.20 [円/kWh](20年の平均値)
コストの比較/
ソーラーパネル > 33.61 [円/kWh]
原子力発電の発電 > 18.20 [円/kWh]
発電コストは、45%ソーラーパネルの方が高いが、僕自身としては、実際にコスト算出してみて感じたのは、思っていたよりもずっとソーラーパネルによる発電は期待できるということだ。これは、家庭向けの発電設備と巨大発電設備の比較なので、発電効率は原子力側に有利であるから、ソーラーパネルも巨大な設備にすれば効率が上がると思われる。また、日本の家庭全世帯の屋根に普及すれば、ソーラーパネルの設備費が格段に安くなり、スペックも上がるだろう。
よって、ソーラーパネルによる発電に切り替えていくことは、夢物語ではなく、結構リアルな選択であると言えないだろうか?
そもそも、福島第一原発のような事故が一度でも発生すれば、上記のコスト比較そのものが無意味になってしまうほど損失が大きいことは、今や誰もが実感してしまった。また、計画停電にしても、一極集中型インフラに頼る社会であるから発生したのであり、各家庭の自家発電も取り込んだスマートグリッドのような分散型インフラであれば、このような事態にはならなかったであろう。
すべての世帯に4kWのソーラーパネルを設置した場合の電力量
すべての世帯に、4kWのソーラーパネルを設置した場合の電力量はどれくらいになるのだろうか?と思い、算出して見た。もちろん集合住宅もあるわけで、特に都心の超高層マンションには、世帯分のソーラーパネルの設置は期待できないが、算出する意味はあると思う。算出根拠は、下記データを利用した。
- 日本の総住宅戸数:
- 5389万戸(統計局データ 「平成15年住宅・土地統計調査」
よって、
- 年間全発電量:
- 4463kWh * 5389万戸 = 240,511 百万kW
この電力量は、日本の電力発電量の原子力発電分に相当する。
- 日本の電力発電量:
-
957,889 百万kW
(統計局データ 「日本の統計 第10章 エネルギー・水 H20年)
内訳/火力:621,286 百万kW、水力:75,914 百万kW、
原子力:258,128 百万kW
誰がソーラーパネルを負担するのか?
インセンティブが得られる方法を考えなければ、移行は難しいだろう。方法をいくつか考えてみた。
- 電力会社が負担する場合は、電気料金の徴収によって、15年くらいで回収できるようにする。
- 個人が負担する場合は、売電によって10年くらいで回収できるようにする。
> 現在は20年くらいと言われている - リース
- 投資家が空いている屋根に投資。(南面の良い角度の屋根面が高額で取引されるようになるかも)
WWFの報告書 「The Energy Report – 100% Renewable Energy By 2050」
上記のようなことをいろいろと調べていたら、WWFが「The Energy Report – 100% Renewable Energy By 2050」というレポートを今年2月に発表していることを偶然知った。地球温暖化防止、具体的にはCO2排出量の削減のために、2050年までに再生可能エネルギーの割合を100%にするためのビジョンとシナリオが書かれている。(建築に興味のある人は、レポート制作にAMOが参加していることにも注目したい)
これを読み、今の事態を考えると、あまりにもタイムリーな内容なので、「これは日本のために書かれたのか?」と錯覚してしまう。このレポートの『「再生可能エネルギー100%」を実現する10の提言』の中でも特に難しいと思われる「社会の合意」が、今や日本では可能なのではないだろうか? 原発既得権を持つ産業界は、大声で反対出来ないだろうし、その既得権者の声を聞いていたのでは、政治家も当選できない。政治は再生可能エネルギーを無視できなくなり、政策を打つ。産業界全体も今回の計画停電に懲りて、再生可能エネルギーに傾き、それをビジネスとする企業も増加するだろう。また日本はそういった技術もあり、再生可能エネルギーへの転換は、安全保障上も有利である。
まとめ
分散型インフラにしても再生可能エネルギーにしても、それらにシフトしていく絶好の環境を日本は得たわけです。欧州だけでなく世界をリードしていくチャンスになると思います。
以上、福島第一原発の事故発生後、調べたり考えたりしたことです。
原発に頼ることをやめ、再生可能エネルギーへ移行する方がリアルな気がしてきました。