2008年11月10日
アンドリュー・ワイエス展
11月8日から12月23日まで、Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催。妻が観たいというので週末に行って来た。本展覧会の見どころは、ワイエスの制作プロセスが興味深く展示されているところにある。テンペラまたは水彩の完成作品に至るまでの習作が多数展示されているのだが、その習作自体が独立した作品といえるようなレベルのものも多く、その多くの収集にあたっている「丸沼芸術の森」には感心してしまうし、ワイエス自身が習作を保管していることからも制作プロセスをいかに大切に思っているかがうかがわれる。
ワイエスの制作プロセスは、たとえば「クリスティーナの世界」の場合
- 構想
- 画面構成
- オブジェクトの習作(クリスティーナの頭部と背、腰と足、手、オルソンハウス)
- テンペラ画として完成
こんな感じなのだが、習作とはいえ描画密度が高く、鉛筆による素描などは完成作品よりも大きな絵で緻密に描かれていることも多い。「さらされた場所」では、完成作品での画面では小さいオルソンハウスの窓のひとつが習作では何度も大きく詳細に描かれ、やはり完成作品では小さく描かれている竪樋やバケツ(中の水の映り込みまで)、家の破風までもが丹念に描かれる。最終的な画面構成を決めるためと思われる習作までもが、鉛筆の素描と水彩それぞれが存在しリアリティーが追及されている。
あと説明は省略するが、なんとなく思ったこと。
- 全体とディテールが密接に関係しているところは、建築の設計プロセスに似ている。
- ワイエスの緻密な描画やリアリティーは、テーマとの補完関係にあるよりも、テーマの補強のためにある。
- 「ページボーイ」(ヘルガが描かれている)を観て、岸田劉生のリアリティーの追求に似ているような気がした。
今日の写真
今読んでいる「ローマ人の物語」がティベリウスのところ。5年ほど前にカプリのヴィラ・ヨヴィスを訪ねたことを思い出し、写真をみているた。するとヴィラからカプリを見渡す眺めがワイエスの「火打ち石」に似ているではないか!(気のせい?)
カテゴリー:アート | コメント (0) | 投稿者:hyodo
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